趣味の海

地理・歴史・社会・経済の自由な分析とまとめ

バングラデシュ, コックスバザールのTeknaf/Ukhiaでの暮らし

バングラデシュ最南端のコックスバザール地区は100万人規模のロヒンギャ難民が隣国ミャンマーから流入している。そのコックスバザール地区内でも最南端の半島部に位置するTeknaf/Ukhia(行政単位: Upazila)は田舎であり、主に漁業、海老の養殖とビンロウと塩の輸出に依存している。

 

地理的条件

Teknaf/Ukhia地区(以下両地区)は面積はたったの650平方km、人口密度は高い。局所的に気候は海洋に大きく影響され、半島の西岸は海風が強く植生に乏しい。土壌も砂っぽく、ほとんどの農業に適していない。東岸のNaf川は潮の満ち干きの影響が強く、しばしば海老の養殖が盛んな沿岸部を浸食する。

半島には南北にかけて標高200m以下のなだらかな丘が縦断し、丘の小さなポケット部は米や他の作物の栽培に適しているが、あくまで例外である。半島にはマングローブ林や砂丘がある。

年間降水量は4300mmで、7-9月の雨季に集中している。意外とサイクロンや強い海風が経済的被害を引き起こすことは少ない。

経済

海老養殖と塩の生産は地域にとって重要で、貧しい世帯に働き口を提供している。飼料となる穀物の生産が少ないから牧畜は盛んではない。観光業が最近発展しつつあるが、現状現地民への利益は少ない。

両地区では農業が盛んではないので、米などの食料をチッタゴンから輸入している。輸入依存度の高いため、食料価格も他の地域と比べて高い。

チッタゴン地区への出稼ぎが最大の流入資本源である。

 

Kutupalong Camp Bazar(約200店舗)とHinla Bazar(約400店舗)はそれぞれKMSとLMSの最寄りの市場であり、食料品・生活必需品・教育用品や医薬品が主な販売品である。市場は道路に接続されており、難民以外の近隣住民も利用する。

ミャンマーとの密貿易(牛・麻薬)も盛んである。

ロヒンギャ難民は密接に地域に溶け込んでいる。

 

生活

コミュニティのリーダーへの取材を通して、住民は経済状況的に4つのグループに分類できることが示唆された。very poor(33%), poor(36%), better than poor(middle)(25%), a little good(better off)(6%)である。定着したロヒンギャ難民はvery poorとpoorに分類できる。

両地区は慢性的な土地不足であり、middle, better offでも平均1エーカーの土地しか所有していない。very poorとなると土地は全く持っていない世帯が多い。たとえば、ボートや漁業用の網、自家消費用のパパイヤやマンゴーの木なども貧しいグループは持っておらず、収入は労働力の提供によって稼ぐのみである。

定着したロヒンギャ難民とホストコミュニティとの関係は良好で、おおむね生産的である。ロヒンギャバングラデシュ人の婚姻も珍しくなく、ロヒンギャが雇われていることもよくある。

ちなみに、全てのグループに携帯電話は普及している。

 

ロヒンギャ難民キャンプでの生活

約半数の世帯がVery poorに分類でき、一日一食しか「おいしい」食事をしていない(他にも食べてはいる)。約7.5%の世帯が主に乞食をして食いつないでいる。

また、約1/4の世帯がpoorに分類される。彼らはVery poorと収入はあまり変わらないが、乞食や燃料量の薪を集めて売るvery poorとは違った、より多様な労働にアクセスできていることが最大の差である。極論言えば全員very poorと言える。

5%を占めるbetter offグループの世帯はキャンプ外のbetter offグループとは異なり、土地や家畜は持っていないが、機織り機や小さな売店・屋台’など生産的な財産を持っている。

ここでも全てのグループの世帯で携帯電話が普及している。

 

収入と消費

 

ロヒンギャ難民キャンプの生活の課題 

  • 食料価格が他地域よりも高い
  • 子供が現地の学校に通えず、教育を受けれない&給食を食べれない
  • 収入が少なく、食事も満足に買えない
  • 「資産」が少なく、生活のResilienceが弱い
  • 住環境が劣悪
  • 将来が定まらず、人生設計ができない
  • 男女間の日雇い労働の賃金格差(400タカ / 150タカ)
  • そもそもTeknaf/Ukhia地域が貧しく、いい仕事にありつくのが難しい
  • 雨季の雨量が多く、住環境・衛生環境が悪くなる
  • 誘拐等の犯罪が多い
  • 子供だけ、老人・障害者などしかいない世帯は乞食とかしないと生きていけない
  • 仕事に対して働きたい人が多すぎる
  • 現地民と違って土地ないし、漁業もできるとは限らない
  • 現地民との圧倒的な金銭収入の差
  • 難民流入が多すぎて賃金が下がっている
  • もともと大部分のロヒンギャは稲作をしていたのにその技能が全く活かせない→出稼ぎでつかえる?
  • キャンプ外への移動が政府によって制限されているから外で働くのが大変
  • キャンプの立地が悪くて外で働くのが大変(LMS)
  • 日雇い労働は技能がいらず、不安定
  • 週2,3日しか日雇い労働で働けない
  • 雨季は燃料用の薪の採取ができず、very poor世帯の収入は半減
  • Social capital(人的関係)が無く、仕事やお金稼ぎのチャンスが得られない
  • 難民キャンプではマイクロファイナンスが提供されておらず、お金を借りれない
  • エンゲル係数がめっちゃ高い(最低5割)ので、何かアクシデントが起こると生活が成り立たなくなる
  • 全てのグループで、医薬品と教育にかけるお金よりおビンロウ・タバコを買うお金のほうが上回っている

 

出典

Mahapatro, M. et al. “ASSESSMENT OF COPING STRATEGIES OF ROHINGYAS IN TWO UPAZILAS IN COX’S BAZAAR DISTRICT, BANGLADESH”, 2017, (online), available from <

http://fscluster.org/sites/default/files/documents/cxb_report_final_draft_compressed.pdf

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